当社が管理するビルでは、テナント様/お客様/従業員など、日々多くの方にご利用いただいております。
ビル管理会社として、突発的な災害に備え、災害発生時の損害を最小限にとどめるとともに、ビル利用者の安全を確保し、一刻も早く事業継続/早期復旧するためには、平常時からの訓練が重要となります。
そのため当社では、災害への備えとして年2回、防災備蓄品訓練を行っております。
先日、防災備蓄品の点検確認や更新、付帯訓練などを行う「防災備蓄品訓練」を実施しました。


主な訓練内容は、
・備蓄品の数量確認・点検
・発電機稼働訓練
・備蓄食品の試食(賞味期限間近)
・簡易トイレ試用体験
・夜間屋外照明作業想定訓練
等となっております。
今回は上記実施内容から、試食や簡易トイレ体験における「衛生の維持」と、夜間屋外照明作業想定訓練における「夜間作業の安全性」についてご紹介します。
災害への備えの中で見落としがちになるのが「衛生の維持」です。
災害時を想定し、食料や各種備品を必要数備蓄しておくのはとても大切なことです。
しかし、それらを使用した後に発生するゴミとその処理方法のことは、どこまで想定できているでしょうか。
今回の訓練では、備蓄食品の入れ替えを兼ねて、賞味期限の近い各種備蓄食品の試食会を行いました。

「思ったよりおいしい」
「これは普段でも食べたい」
「災害時に温かい食べ物はありがたい」
「火がいらないのはすごい」
「麺がおいしくない」
など、様々な意見が出ましたが、概ね好評でした。
しかし、試食会を終え、机の上を見るとそこに残されたのは……

食品の食べ残しをはじめ、紙類、アルミ袋、金属缶、プラスチック容器、割り箸、プラスチック製スプーンやフォークなどなど……。
ご覧のように多種多様なゴミが発生しました。


ここで改めて考えさせられたのが「災害時のゴミ問題」です。
交通が麻痺するような災害の場合、ゴミ回収車は普段通りのスケジュールでは回収を行えません。
自治体や専門業者によるゴミの回収が1週間後なのか、1ヶ月後になるのかわかりません。
自治体により対応は様々ですが、回収が優先されるのは公的な避難所で発生するゴミです。
「事業系一般廃棄物」については、「練馬区災害廃棄物処理計画」の中に下記のような一文があります。
—–平常時と同様の処理が困難な場合には、必要に応じて、排出抑制や一時的な保管に関して協力を要請する—–
<練馬区災害廃棄物処理計画(素案)案:令和6年11月25日>より
つまり、ビル等から出るゴミは回収できるようになるまで、各事業者が一定期間貯めておく必要があります。
腐敗性のある生ゴミ等を含むゴミは「生活環境の保全/衛生の維持」という観点からも、むやみに放置できません。
一定期間、これらのゴミを問題なく保管しておくための手段を用意しておく必要があります。
次に、上水道が止まった場合を想定し、簡易トイレの訓練を行いました。
簡易トイレとは、大便器にビニール袋をかぶせ、し尿に付属の凝固剤をかけて固めて処理するというものです。
訓練では実際にトイレをするわけにはいかないので、し尿の代わりに木酢液を用いて、処理方法と臭いなどを体験することにしました。


結果、凝固剤をふりかけた後、ビニール袋の口をきつく縛っても、木酢液の臭いはいつまでも消えませんでした。
また、手に臭いがつく場面もあり、これがし尿だった場合、とても「生活環境の保全/衛生の維持」はままならないことが、確認されました。

そして、多くの方が簡易トイレを使用した場合、トイレ廻りが酷く汚れることが予想され、ビニール袋の設置方法やトイレ後のゴミ処理方法が問題となしました。
・ビニールの設置は素手で行うのか
・し尿の入った袋はどこにどうやって貯めておくのか
・回収はどうやって行われるのか
自治体によって対応が異なりますが、多くの場合、し尿を凝固剤で固めたものは「可燃ごみ」扱いとなります。
上記の生ゴミと同様に、こちらも回収されるまでは、一定期間どこかに貯めておく必要があります。
ゴミを一定期間貯めておく必要がある以上、対策として密閉&隔離する必要があります。
そこで活用したいのが「臭わない袋(メーカーWEBサイト)」です。臭いと菌を遮断し、燃やしても有毒ガスを発生しないため、使用後は燃やせるゴミとして処理できます。


食料品などの生ゴミは「臭わない袋」に入れてから、分別してゴミ袋へ。
簡易トイレのし尿は「臭わない袋」に入れたあと、蓋付きのポリバケツで隔離する、という方法を試しました。
結果、生ゴミや木酢酢の臭いはしなくなり、これなら「ゴミを一定期間貯めておくことが可能」なのではないかと、採用されることになりました。
また、簡易トイレ使用時には使い捨ての手袋を着用することとし、手袋専用のポリバケツを別に用意することで、ある程度は手指の汚れが防げるのではないかと考えました。
今まで見落とされていた、「災害時のごみ問題」にフォーカスすることで、これまで以上に災害への備えとして役立つ訓練になったのではないでしょうか。
次の訓練は「夜間作業の安全性」についてです。
災害で生じたガレキや割れたガラス等を夜間に撤去する必要が生じた場合、手元を照らす照明が不可欠です。

当社では、災害時に備えて各種照明器具を備蓄してあります。
災害時に夜間作業が生じた場合、それらの照明器具はどの程度役に立つでしょうか。
労働安全衛生規則第604条には、労働者を常時就業させる場所の作業面の「照度」の基準が定められていて、
「精密な作業」300ルクス(Lx)以上、「普通の作業」150Lx以上、「粗な作業」70Lx以上となっています。
しかし、今回の場合「常時就業」ではなく、突発的に発生する不確定な現場での作業です。
このような場面での「照明器具は◯ルーメンで、作業面の照度は◯ルクス以上必要」などの基準はありません。
作業に必要な明るさを確認するためには、現場を再現したシミュレーション訓練で実際に確かめる必要があります。
そこで、暗所にダミーのガレキを用意し、「暗闇の中でスコップを用いてガレキを回収する」という訓練を行いました。


上記が訓練の様子です。
訓練に使用した照明器具のスペックと使用感は以下の通りです。
・左:LEDヘッドッライト <明るさ70ルーメン/使用可能時間8時間>
◯小型軽量/両手が使える
✕手元をうっすらと照らし、一人が何とか作業できる明るさ
・右:LEDランタン <明るさ1300ルーメン/使用可能時間6時間>
◯手元を明るく照らし作業は容易
✕明るい範囲が狭く複数人での作業は危険
ご覧のように、備えていた照明器具では、とりあえずの作業は可能なものの、「安全に作業を行うだけの充分な明るさがある」とは言えない結果となりました。
上記の照明器具では作業時の明るさが足らないと感じたため、さらに明るく広範囲を照らせる照明器具を備えておくことにしました。
しかし、明るさが増すということは、消費電力が増え、使用可能時間が短くなります。
電気の供給が遮断されている災害時のことを考えると、なるべく長時間使えるものが安心です。
そうなると、バッテリー内蔵タイプの照明器具では限界があるため、外部電源を使用するものが選択肢に上がり、それと共に、持ち運び可能なポータブル電源の導入が検討されました。
ポータブル電源と照明器具は災害時に持ち運べる重さとサイズ、容量、耐久性、コストなどを考慮して機器を選定しました。

上記が「ポータブル電源+LED投光器2台」での訓練風景です。
ごらんのように、手元だけでなく、足元や周囲も充分な明るさがあり、これなら複数人でも安全に作業をすることができます。
使用した機器のスペックは以下のようになります。
・ポータブル電源<容量515wh/出力600W/重量6.5kg>
・LED投光器<明るさ2000ルーメン>×2台
上記セットでの使用可能時間は13時間程となります。
ポータブル電源の用途は照明だけではなく、消費電力600Wまでの家庭用100v機器をそのまま使用できます。また、USBポートを備えているので、スマホやタブレットを直接挿して充電することができます。
防災備蓄品として各種照明器具を準備してありましたが、今までガレキ撤去などの作業で実際に使用することはありませんでした。
訓練とはいえ暗闇での作業を体験してみて、スペックだけではわからない実際の使い勝手がわかり、必要とされる明るさや機能が浮き彫りとなりました。
今回は「ガレキ撤去作業」という使用用途でしたが、災害時の用途によって必要とされる照明器具の明るさや機能は異なりますので、各種使用用途に応じた照明器具を備えておく必要があります。
今回の訓練で問題となった、
・備蓄食品や簡易トイレ使用時の「ゴミ処理問題」
・作業用に備えていた照明器具の「明るさ不足」
これらは備蓄品を実際に使用してみるまで、問題点として実感できないものでした。
机上での想定だけでなく、実際の環境を再現したシミュレーション訓練を実施することで、今回のような問題点が浮き彫りになることがあるのではないでしょうか。
今回の訓練を通じて、「防災備蓄品」を購入して倉庫に置いてあるだけでは「備えとして不十分」なのだと、再認識することとなりました。
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